おおかみさん。

何か僕、姓名判断によると「正論を盾にトラブルを起こす」とか書かれてました。

ぅおう。あってる。まあ僕のは正論つーか屁理屈ですが。

そして屁理屈こねないと「らしくない」とか言われるので反省することなく突っ走りたいと思います。

・・・でもちょっとはじめなのでヘタレ気味にマイナーぽくて褒められる奴をピックアップ。

オオカミさんと七人の仲間たち (電撃文庫)

オオカミさんと七人の仲間たち (電撃文庫)

大学の先輩が「おすすめー」と言ってきたラノベ

一言で言うと非常にゆるい学園もの・・・ってとこでしょうか。

構成にやや難あり(一巻での感想です。為念)ですが、なかなか良かったと思います。

先に悪いところを言っておこう。

要するにこれ、短編集の形態をとっていつつ、1巻単位でまとまりを付けようと言う意図なのか、大きな流れを組み込もうとしているような感じを受けました。ぶっちゃけ王子様関連のエピソードがそれ。

でも短編集と言うことで、その流れからテーマ的にもお話の流れ的にも完全にあぶれちゃってるエピソードがあるんですよね。で、そのあぶれちゃってるエピソードのほうが面白いときもあったりして、そこで構成的にアンバランスな印象を受けたり。乙姫さんとかすげえいいキャラなのにオオカミさんの弱さがどーとか関係ないじゃんと。

もう一つ。

これは個人的な好みの問題だと思うんですが、地の文の立ち位置、これ完全に状況に対する第三者なんですよね。三人称なんで本来は全然問題ないんですが、これ、人格を感じさせる第三者として書かれてます。

それが妙に傍観者チックと言うか、変に冷めた視点で(冷笑的とまでは言いませんけど、基本どこかしらスカした文体ですよね、これ)。その語り口にちょっと歯がゆさを感じました。人によっては嫌悪感を覚えるかも。何というかこう、節々に「上手いこと言おう」みたいな雰囲気が漂っていますし。世界からして箱庭みたいな感じで妙なリアリティの無さもあいまって…それ自体はコンセプトに沿っているだけなんで責めるトコじゃあないんですが…そこに嫌らしさを見出す人も居るんじゃないでしょうか。

で、人格を持った傍観者なので、根本的にキャラの心情に寄り切ることがないんですよね。ある意味公正な立ち位置なんですが、なんかフィルターかけたようにもやがかかってる部分があって、いい造形したキャラなのに萌えきれない、不完全燃焼な感じを受けました。作者の意図によってキャラが固定し切れてないというか――そこが間口の広さと言うか、広く受け入れられる土壌にもなっていると思うんですが、個人的にはもっとオオカミさんのナヨナヨした部分にガッと寄ってニヨニヨハアハアしたいんだよーと。

でも一方で、これが長所にもつながってるから困ったはなしで。

以下、良かった点。

一番この作品で評価したいのがそういった視点やらそこから発せられるもろもろの描写の「お手軽感」だったりするのです。

こういう言い方するとアレですが、「いい意味でも悪い意味でも安っぽい」感じがしました。ラノベを文字通りの「軽小説」として捉えるならこの作品は非常に標準的且つ模範的。文章も平易で・・・ちょっと説明台詞でまごつくと言うか、リズムを崩してる感はありましたが、基本的に読んでいて詰まるところはありません。非常にさらっと読めます。

で、その作品全体の雰囲気に確かに合ってるんですよね、この地の文の立ち位置って。きちんと作品のコンセプトに寄り添っている。

どこまで意識しての事かわかりませんが、そういう情報の統制とでも言うんでしょうか、そこはかなり上手い事行ってるんじゃないでしょうか。

何と言うかこう、「俺はこれが好きだああああああ!!」とか声を大にして言うものでは決してないんですが、ふとした拍子に買ってさらっと読むにはちょうどいいお得感があります。

基本、短編集なのでちょっとした電車移動の間にも読めて心の安静に役立ちます。そんな感じ。毒もないので余計にそんな印象。

最近・・・と言うかそれ程最近でもありませんが、何かここ数年来、単に暗い話やグロイ描写やら中二病的価値観を取り上げて「これこそが作家性」みたいな勘違いをしているんじゃないかーみたいな作品も増えてきて、そういうのにげんなりしていた身としてはこういう自覚的にゆるい方に突っ走っている作品には好感が持てました。キャラにも大抵好感持てるように出来てるしね。



・・・・ちなみに。

これ読んだ前後に「君の居た昨日、僕の見る明日」を読むと、あまりの食い合わせの悪さにげんなりする事請け合いです。超オススメ。

オオカミさんはいかにもな「箱庭系楽園的学園もの」、キミボクは「ラノベ的学園ものなんて現実逃避のための虚構に過ぎませんよフヒヒ」な作品)